ADHDの人は警察官に向いているのか

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はやぽん(@hayapon_adhd)です。

私は警視庁の警察官として13年間勤務し、警察に在職中に発達障害(ADHD)の診断を受けた発達障害の当事者です。
警察官を目指す人、発達障害の当事者の方など様々な方がこのブログを訪ねて下さいます。
その中でも

などと、ADHDがあっても警察官として仕事ができるのか気になっていらっしゃる方から質問が多く来ていました。
ADHD当事者で元警察官という立場から

  • ADHDの人は警察官になれるのか
  • 適性があるのか

ということについて書いてみたいと思います。

私の経歴について

警察官になるとまず、警察学校で訓練を受けます。

後に交番勤務、機動隊などの部署を経験して警察官を拝命してから10年目の年に私が希望していた部署に異動しました。そして、業務過多や職場の人間関係で悩み適応障害を発症して休職。
休職した原因を調べていく内に発達障害(ADHD)があるということが発覚しました。

私のADHDの特性と業務の特徴について

警察官として仕事をする上で重要となるのが職務に耐えられるだけの心身の状態であるのか、ということになります。警察官の仕事は、どんな現場であっても迅速に、臨機応変な対応が求められます。そして、それに耐えうる体力と精神力が必要となってきます。
ここで問題となるのがADHDがあると職務上のストレスや状況の変化に耐えられるのかということです。警視庁の採用試験にはADHDであると採用されない、とは明記されていません。
「警察官としての職務執行に支障のある疾患がないこと」とだけ書かれています。
これについて考えてみたいと思います。

発達障害はADHDをはじめとし、得意と不得意の差がとても大きい脳機能の障害とされています。得意なことを見つけて伸ばすことができれば、誰にも負けない強みとなる可能性を秘めています。しかし、苦手なこととなると発達障害を持っていない人なら当たり前にできると思われる簡単な事でも困難に感じるという場面が出てきやすい特性があります。警察官は時間や現場を選ぶことができません。どんな現場でも「行け」と言われたら駆け付けて事故や事件の処理、書類作成や証拠採取などの作業をしなければなりません。

どんなに疲れていたとしてもミスをすることは現場では許されません。交通事故の現場などでは車が行き交う中で、自分や同僚の安全を確保しながら、交通整理や事故処理のために写真撮影や実況見分を行うというマルチタスク作業が発生します。どんな現場でも失敗をせずにマルチタスクをこなし続けることのできる人材を警察は必要としています。ミスは多いけれど何か芸術的なひらめきや発想ができる一芸に秀でている飛びぬけた才能を持っている人は警察にとってはリスクとなり得るのです。そういう意味ではADHDの特性を持っていると業務では不利になったりリスクになる可能性はあるかと思います。

ADHDがあると警察官の適性がないのか?

ADHDを持っていると警察の業務にとってリスクに感じる場面や勤務は多かったように感じます。警察の業務で具体的に私が負担に感じたことをまとめました。

1.仕事自体がマルチタスク、臨機応変な対応の連続

交番勤務では110番通報が入ると警察官は

  • 現場へ向かい状況の把握
  • 被害状況の確認
  • 被害届の作成・実況見分
  • 写真撮影(場合による)
  • 現場見取り図の作成・交通整理(交通事故の場合)

などがあります。例えば、被害の状況を聞きながら、メモを取り、無線で署に報告をしつつ、次に何をするべきかを考えます。これをしている最中に横から同僚に状況の確認や署に報告をしたのか、など聞かれ、次はこれをやってと指示が入ります。
かつ、事故が起きているだけにゆっくりと確認しながらなんてできません。迅速に行う必要があります。これだけで私にとって苦手なマルチタスクが山盛りです。
頭がパンクします。

どうにかこうにか乗り切ってました・・・。

ADHDを持っていると一度にいくつもの作業を同時にこなすマルチタスクが苦手な人が多く、マルチタスクをすると極度に疲労したり頭が混乱してしまう人も多いといいます。
いつ110番通報が入るのか、時間や現場を選べない中で、「迅速に現場に向かい現場を処理する」というのは想像以上に負担のかかる仕事でADHDのある私にとってはかなり大変だったという記憶があります。

2.危険な現場が多く一つのミスが大事故、取り返しのつかない事態になる危険性がある

交番勤務では

  • 真夜中の見通しの悪い道路上での交通事故の現場処理
  • 真夜中の見通しの悪い道路上での交通整理
  • 繁華街での酔っ払いの喧嘩の仲裁

などの危険な現場での対応もあります。また、夜中だと疲れや眠気もあるため、より一層注意が必要になります。
ADHDの特性により、睡眠が浅く(基本的に睡眠の質が悪い!)、疲れが取れにくい私にとってはより大変でした。一つ判断を誤ったりすれば自分や同僚、または事件の当事者の安全に関わります。事件などの緊迫した状況では普段以上にミスをしないようにかなり気を使いました。

3.物の整理、管理が苦手なADHDには装備品の管理は負担、

警察官は非常に多くの装備品を身に着けて勤務をします。

画像:神奈川県警察ホームページより

交番勤務の警察官は以上のような装備品を常に身に着けて勤務しています。これらの装備品は管理がとても厳重です。特に拳銃については落として悪用されてしまうと
「ミスをしてしまった」
では済まされない事態になってしまいます。

ADHDを持っていると整理整頓、部屋の片づけが苦手で財布やスマホをしょっちゅう無くしたり落としてしまうことで困っている人が多いという話をよく聞きます。
私も物の片づけや整理はとても苦手です。
でも、警察学校時代の厳しい教育環境で整理整頓をする習慣を身に着けることができました。警察署の交番勤務時代も独身寮で先輩と相部屋で片づけしないわけにはいかない環境だったため、その緊張感からなんとか片付けや整理整頓をすることができていました。
その教育の賜物で、退職するまでに幸い、装備品を無くすという事態にはならなかったのです!
ほんとになくさなくて良かった・・・。
物の管理が苦手、しょっちゅう財布などの大事な物をなくすという人は、警察官として勤務するのにかなりの努力を要するのでは・・と思っています。

4.時間厳守、指示厳守のガチガチのルールの元で勤務するプレッシャー

警察官は危険な現場や任務が多く、拳銃など悪用されたら大変なことになる装備品を身に着けて勤務しています。
そのためやはり規則や時間にはとても厳しく、少しでも破れば厳しいペナルティが待っています。
旅行に行くときは

  • 日時
  • 場所
  • 誰と
  • 何をしにいくのか

を事前に予定表を書いて上司に許可をもらっておく必要があります。休みの日でも緊急時の呼び出しに備えて常に携帯電話を取れるようにしておかなければならないなどのルールがあったりします。ADHDを持っている人は、人にルールや規則を強制されたり、時間通りに行動することが嫌いだったり苦手な人が多いという話をよく聞きますし、私も苦手です。そのような縛りが多いという環境で自分を抑えて行動するということが我慢できないという人は警察官として勤務することが精神的に負担になる可能性があります。

さいごに

私自身、在職中にADHDを持っていることがわかりました。今まで警察官として勤務していてやりづらいな、うまくいかないなと感じることの多くの原因がADHDの特性からくるものだったのではないか、と今考えるとそう思います。もし私が警察官採用試験を受ける前にADHDを持っていることが分かっていてADHDの特性がどういったものなかが分かっていたら受けることはしなかったかもしれません。しかし、ADHDがあるからといって直ちに警察官としての適性がないとかあきらめた方がいいとは一概には言えないとも私は考えています。
危険な現場や普通の人であれば怖くて踏み出せないような現場でも持ち前の衝動性や多動性を生かして生き生きと仕事をしている人は実際いました。ADHDの診断を受けているわけではなく、多動傾向が強いなぁと感じる同僚が多くいました。※あくまでも私の独断と偏見です。ADHDの傾向や特性があってもそれらの特性が仕事の支障にならなければ警察官としてもやっていけるでしょうし、適性もあるということができると思います。自分自身がどんな職業適性があるのかどんな障害特性があるのかはその人の環境や長所や短所を色々と見極めてからでないと何ともいえないというのが私の結論です。

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この記事を書いた人

このブログを運営しております、「はーちゃん」です。会社の人間関係が原因で、うつ状態になり、休職。休職中に発達障害(ADHD)と診断されました。2年半の休職を経て元の部署に復帰しました。私と同じような境遇で悩んでいる方、悩んでいる方の友人や家族の方などに、少しでも有益な情報発信をしていければと思います。

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