発達障害(ADHD)の診断が人生のターニングポイントに

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はやぽん(@はやぽん)です。

今回は今もお世話になっているメンタルクリニックに転院して発達障害の診断を受けるまでと、発達障害の診断を受けて起こった心境の変化についてご紹介します。転院する前の病院と私が休職するまでの経緯についてはこちらをご覧いただけたらと思います。

発達障害と診断されるまで

医師への相談

私は医師や病院のスタッフに対して信頼する事ができなくなってしまったために通院を打ち切り、休職前に元々通おうとしていた近所の病院に年明けから通院する事になりました。

初診では、私が適応障害になって休職に至るまでに抱えていた人間関係の悩み、仕事をなかなか覚えられずに叱責を受け続けて悩んでいた事、書類の誤字やミスが頻発し、それを上司から叱責され続けてことで身体と心が限界を迎えてしまった事など詳細に新しい主治医に伝えました。そして最初に通う事になった病院のスタッフと主治医を信頼する事が出来ずに、ここに転院する事になった経緯についてもお話ししました。主治医はそれを真剣に聞いてくれました。

主治医は私の話を聞き、

主治医
主治医

その状況で適応障害になったという事は、はーちゃんさんには発達障害の可能性があるかもしれませんね。

詳しい検査に入る前に簡単な質問用紙に『はい』『いいえ』で解答して下さい

と質問用紙と回答用紙を手渡されて、その場で解答を記入しました。記入が終わった解答用紙を手渡すと

主治医
主治医

詳しい検査や問診を重ねないと発達障害の診断はまだ出す事はできないですが、

はーちゃんさんはADHDを持っている可能性が高いですね

先生から

  • 検査が混んでいるので実施できるのは1ヶ月後
  • ストラテラ(ADHDの人に処方している薬)という薬を1週間分処方するので、様子を見てみること
  • 体調の異変を感じたらすぐに連絡すること(当日でも診察可能ですので、遠慮なく連絡してください)
  • 薬の効果と副作用についての説明

などの提案・説明がありました。

最初の主治医と違って、相談に乗ってくれそうな担当医だな。

これなら少し希望が持てるかもしれない

と安心した気持ちになりました。

wais検査を受ける

私はwais-Ⅲ検査(成人用ウェクスラー知能検査waisの改訂第3版)を2019年2月末に検査を受けました。転院から約2か月後でした。※現在はwais-Ⅳ 改訂第4版がリリースされていますので2022年に受けるとしたら最新の第4版になる方が多いと思われます。

waisでは大きく分けて「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」という4つの指標と4つの指標を合わせた総合的な全検査IQという指標で個人の能力の凹凸(得意と不得意の能力差)を判断します。

発達障害者はこの得意と不得意の能力差が大きい傾向にあるため、waisを受けると発達障害の特性を持っているかどうかの目安になります。私がこの知能検査を受けた時は途中に休憩時間を挟んで約3時間でした。私が検査を受けたクリニックでは検査の結果は約一か月後に判明し、担当の心理士から検査結果と所見について説明して頂きました。

ざっくりいうと下記のような検査です。※具体的な検査内容をお伝えしてしまうと検査の結果に影響してしまう可能性があるので、詳細についての言及は控えさせて頂きます。

  • ある言葉の定義について説明する検査[言語理解(言葉を理解する能力、説明する能力)]
  • パズルを渡されて指示された完成図通りの図形を組み立てる検査[知覚統合(図やグラフを見て考えたり、イメージする力)]
  • 言葉や数字を読み上げられてその言葉を記憶できるかの検査[ワーキングメモリ(情報を一時的に記憶する能力)]
  • 指定された時間内に足し算を解き続けて正解率や速度を計測する検査[処理速度(仕事や作業の要領の良さや頭の回転の速さに関わる能力)]

などのような問題を約3時間、心理士が対面で出題してひたすら解き続けました。検査が終わった時はぐったりでした💦

検査結果により発達障害と診断される

  • waisの検査結果
  • 診察時の様子
  • 日頃の生活状況
  • 学生時代の通知表や学業成績

上記を元に総合的に判断をし、主治医より発達障害(ADHD)との診断をされました。この知能検査の結果は発達障害かどうかを医師が判断する材料の一つになりますが、それ以上に私は自分の得意なこと、不得意なことが整理でき、今後の日常生活をどのように過ごしていくべきか、仕事でどのような工夫が必要なのかヒントをもらうことができ、検査を受けたことに大きなメリットを感じています。

また、検査を担当してくれた心理士の所見や、知能検査の結果は、自身の特性について上司や同僚に伝え、仕事上の配慮をお願いする際に客観的な資料としてとても有効でした。

発達障害(ADHD)と診断されて良かったこと

自分を許すことができた

私は書類の誤字や脱字、物忘れがひどくて報告書の提出期限を忘れてしまったり、大事な書類を忘れたりといったミスばかりしていてその度に先輩や上司からは

こんなに仕事でミスや忘れ物がひどかったりと人に迷惑ばかりかけても全く改善しようとしないのは人に甘えているからだ。

努力が足りなくて怠けているから間違えばかりやらかすんだ。

こんなんで給料もらえるなんて楽だな

などと叱責や厳しい指導の言葉を受け続けた結果、そのストレスに耐えきれなくなり、抑うつ症状を発症して休職することになってしまいました。

しかし発達障害(ADHD)の診断を受けたことによって私は

自分がどうやってもできなかった困りごとのほとんどは発達障害のせいだったんだ。

先輩たちから甘えているとか努力が足りないと言われ続けてすごく辛い思いを溜め込んで病んでしまったけど、出来ない原因は発達障害にあったんだ!
自分の努力不足や甘えなんかじゃない。

というように、自分が仕事でミスや忘れ物ばかりする原因は自分の人間性や性格にあるのではなく、はっきりと発達障害が原因だということが分かり徐々に自分のことを許すことが出来るようになり気持ちが楽になりました。

自分の苦手なことへの対策ができる

私は電話をしながらメモを取るといった複数の作業を同時並行で進めることが極端に苦手です。ほぼできないに等しいです。

そして、書類のケアレスミス、簡単な足し算のミスをが頻発します。これが障害の特性でできないんだということが分かったため、困りごとに対して事前の対策を練りやすくなりました。

残念なことに、発達障害そのものを完治させる治療法はまだ発見されていません

職場では、下記配慮をお願いし、自分の苦手なことを軽減させるようにしました。

  • 薬の服用や特性、症状に合わせて仕事や生活がしやすいように環境を調整
  • 上司に自身の特性で苦手に感じたりミスをしがちな作業については二重にチェックを依頼

また、下記、工夫を実施。

  • スケジュールや仕事の抜けや漏れを防止するためのリストを作成して仕事の進捗状況を可視化
  • 仕事の締め切り忘れ防止のために時計のアラームやリマインダーを活用

受けることができる福祉サービスがある

診断を受けると金銭面や生活面で様々なメリットを受ける事が出来ます。下には私が実際に受けている障害福祉サービスについてご紹介します。

  • 自立支援医療制度(通っている精神科・診療内科の診察代と薬代が一割負担になるので金銭面で負担減)
    通院による継続的な治療が必要な人が申請・利用する事ができる制度です。
    通常病院にかかる時は3割負担ですが、この制度を使うと1割負担にまで費用を軽減する事ができます。
    さらに世帯所得額(納税額)による区分が設けられており、所得が一定未満の人に対しては1ヶ月あたりの自己負担額に上限が設定されています。
    上限額を超えた分の費用は公費で補填してくれるので1ヶ月に上限額以上の医療費を払わなくてよくなるので費用の心配をせずに治療に専念する事ができます。私は休職によって収入が減ってしまったので1割負担で通院する事ができるようになって金銭面でとても助かりました。
  • 精神障害者保健福祉手帳
    私のように発達障害の診断を受けた人やうつ病などの精神疾患の人が申請して受理されると交付される手帳です。
    住んでいる地域によって受けられるサービスの内容や割引の範囲が違ってくるのでお住まいの自治体のホームページ等で確認してください
    私が住んでいる東京都内では都営地下鉄や都営バスの運賃が無料になったり、公営の体育館やプール、美術館や映画館の入場料が割引料金や無料で使えたりします。
    こちらのサイトでは、障がい者手帳の提示で割引や無料で利用できるようになる施設やサービスについての情報を提供されているので参考にするのもいいかと思います。
    *手帳提示により受けられるサービスの料金については変わっていたりサービスが終了している可能性もありますので利用される際には直接施設のホームページ等で確認される事をお勧めします。
  • 障害年金
    病気やけがによって生活や仕事などに制約を受けるようになった方が受け取れる年金です。働く現役世代も要件を満たせば受け取ることができます。実際に私も「障害厚生年金2級」を働きながらも受給しており、職場の給料と合わせて年金を受け取りながら生活しています。
    障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、病気やけがで初めて病院にかかった時に国民年金に加入している人は「障害基礎年金」、初めて病院にかかった時に厚生年金に加入していたら「障害厚生年金」となります。
    ざっくりと言ってしまえば会社員など組織に雇われて働いている人は「障害厚生年金」、自営業や個人事業主であれば「障害基礎年金」と分類できます。
    *障害年金を受け取る資格があるのは

1公的年金に加入し、定められた以上の期間保険料を納付している事
 障害年金を請求しようとする傷病にかかる初診日の前日において初診日の属する月の前々日までの被保険期間についての、保険料納付期間と免除期間を合算した期間が加入期間の3分の2以上ある事

2初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々日までの1年間に保険料の未納がないこと

  参考:日本年金機構
  • これも簡単にいってしまえば病気やケガで病院にかかる2か月前までに全納付期間のうち3分の2以上年金を収めている事
    または
  • 初診日の2ヶ月前までの1年間に未納期間がないこと

また、会社勤めの方で障害年金の対象とはならない場合でも、私のように適応障害やうつ病等で休職した場合は、「傷病手当金」といって休職してから1年6か月は基本給の3分2が毎月もらえるといった制度があります。そのため、金銭的な心配をする事なく療養する事が保障されています。

障害年金を請求する事ができるのは休職した原因となった病気やケガで初めてその病院にかかってから1年6か月を過ぎてからです。

最初の1年半は傷病手当金を受給しながら療養に専念して1年半を経過しても復職や再就職が出来なければ障害年金を検討するのが良いかと思います。

私の場合も休職してから1年半は傷病手当金を受給していましたが、度重なる復職失敗により病状が安定せずに1年半が経ってしまいました。

その後、障害年金を受給請求して、無事支給を受ける事ができました。

正直に言いますと「障害年金」は制度があまりにも複雑です。受給するための条件や請求するため、自分の病状や治療状況を記載する「病歴・就労状況申立書」の作成が必要です。また医師の診断書も必要です。この請求するための労力がとても大きいです。

この作業を自力でやろうとすると病状がさらに悪化するのではないかと思うほどでした💦

私

苦手な資料作成でうつになっちゃいそう・・・

母子手帳まで見ないといけないし・・。

障害年金を請求するために削る精神力や体力はとても大きいので、この負担を減らすために私は社会保険労務士というプロの方に書類作成や請求の代行をお願いしました。下記のように検索してみてください。 

障害年金の請求手続きの代行を行ってくれる社労士事務所がたくさんあります。

受給を考えている方は、自力で請求する労力とプロに支払う成功報酬を天秤にかけて検討されるのが良いかと思います。

発達障害と診断されることの苦悩やつらさ

私は発達障害の診断を受けることで、ずっと悩んできたことは自分の性格や努力不足のせいではなく、生まれつき持っていた障害が原因だったことが分かりました。

今までの自分を許すことができましたが、それは診断を受けてすぐにできるようになった訳ではありませんでした。

以前書いた記事で詳しく紹介していますが、病気や障害と診断された後には心の葛藤や否認に苦しむ段階があり、その試練を超えて初めて自分を許すということが出来るようになりました。

診断を受けたばかりの当時の私はまだ、先天性の完治することのない障害というハンディを持ちながら社会で生きていく事が出来るのかという不全感でかなり葛藤していました。

また「障害者」というレッテルを貼られた弱い人間、人よりも劣った人間として生涯過ごしていかなかければならないのかという思い込みと不全感で診断を受けてからしばらくは診断前よりもかえって情緒不安定にもなっていました。

どうしようもなくこみ上げてくるイライラや怒り等の感情を身近で一番気遣ってくれていた妻や子供にぶつけてしまいました。このため、精神症状が悪化したのではないかと妻に心配をかける程の状態でした。

私は診断を受けることで自身の能力の凹凸を知り、苦手なことへの対策や長所の発見と成長へのヒントをもらうことができました。

そして様々な障害福祉サービス等のメリットがある一方で、診断を受けることで受忍しなければならない心の葛藤や気持ちの揺れ等などの試練があるということも経験しました。

今、ご自身や身の回りの方がこの記事をご覧になっていて発達障害の診断を受けようかどうか迷っているならば、私からお伝えしたい事は

  • 発達障害の診断によって受けられるメリット
  • 発達障害の診断によって経験する心の葛藤

の両方を考えてそれでも診断を受けた方が今後の人生にプラスになると思ったのであれば、診断を受けられるのが良いのかなと感じます。

私は診断を受けて心の葛藤や辛さも経験しましたが、その辛さを克服して今はありまのままの自分を許すことができるようになったので発達障害と診断されてとても良かったです。

発達障害と診断されてからいろいろな努力をした結果、考え方・物事の捉え方が本当に変わりました。私が変わったことで妻にもいい影響がありました。

この診断は私にとって人生を大きく変えるターニングポイントでした。

最後に

私が障害者であることを認めて自分自身を許すことが出来るまでに経験してきた苦しみと試練。私は発達障害と診断されることで経験しなければならない自分自身との闘いがあるとは想像もしないまま発達障害の診断を受けたことである種のパニックのような状態になり、それを克服するために約2年間という長期に渡って苦しい思いをしてきました。

もし、現在自分自身が発達障害かもしれないと不安な気持ちになっていて、病院で診断を受けようかどうか迷っている方が私の記事を読んでいらっしゃるのであれば私の経験から何か参考にできるものがあればと思っています。

twitterやお問い合わせのページからこの記事の感想やご質問を頂ければお答えいたしますので、気軽に連絡下さるとうれしいです。

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この記事を書いた人

このブログを運営しております、「はーちゃん」です。会社の人間関係が原因で、うつ状態になり、休職。休職中に発達障害(ADHD)と診断されました。2年半の休職を経て元の部署に復帰しました。私と同じような境遇で悩んでいる方、悩んでいる方の友人や家族の方などに、少しでも有益な情報発信をしていければと思います。

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